機能性ディスペプシアと過敏性腸症候群
診断について2016.10.19
機能性ディスペプシア(FD)
過敏性腸症候群(IBS)
どちらもお腹の病気ですが、ご存知でしょうか?
最近はどこかで耳にしたことがある方も多いのではないかと思います。
基本的に生命に関わるような重篤な病気ではないですが、本来病気が少ないはずの若年者に多く、胃痛や下痢などの症状が頻繁に起きるため、常にトイレを気にしたり、食事の楽しみが減ってしまうなど、生活の質が下がってしまう病気です。
現代社会のストレスと関係性が高いとも言われています。
FDは主に胃の不調。検査で特に異常はないにもかかわらず、胃のもたれやムカムカ、食後の痛み、食欲不振などの症状が続くような方が該当します。
IBSは下腹部の症状、特に通勤通学時や、緊張する場面、疲れた時や冷たいものを食べた時などに下痢をしやすい方が多く、そのほか便秘と下痢を繰り返すケースや、お腹にガスが溜まって苦しいという症状を訴える方もいます。昔からお腹を壊しやすい体質だと言う方も多く含まれます。
どちらも原因は様々であり一つの病気を意味するものではありません。検査で明らかな異常が認められないにもかかわらず、ある一定期間胃腸の症状が持続する状態の大まかな総称として定義されています。その多くは消化管運動や消化液分泌をつかさどる自律神経の障害と考えられています。
消化器の自律神経が障害されると、食べ物が胃に入り、徐々に消化して下に送り出し、排便されるまでの長い道のりのどこかで、消化管の動きや消化液の分泌のバランスが崩れ、正常に機能しない状態が生じます。そのために消化管の過収縮や過進展などが生じ、痛みやもたれ、ガスの貯留や下痢などの症状が出現すると思われますが、現在普及している画像診断方法や採血検査などではこれらの異常を明確に捉えることができません。イコール、検査では異常がないということになります。
「検査で異常がない」ここがポイントです。
胃カメラや大腸カメラ、CT検査や採血で原因となる異常が見つからない、でも症状は続いている。これが患者さん本人の悩みどろこでもあり、すっきりと治療ができない原因でもあります。また明らかな検査異常がないため、周囲に病気を理解してもらえないという悩みを持つ方も多いようです。
目に見える、はっきりとした診断がつくような疾患は治療も確立されているものが多いですが、症状ベースの疾患に関しては、個々で原因も違っていたり、いわゆる薬の「合う、合わない」も影響するため、なかなか治療が進まないこともあります。
私も胃酸抑制剤や運動改善薬、整腸剤、漢方薬などをそれぞれの方に応じて組み合わせて「合う」ものを探しています。最初の選択がうまく効いてくれることもありますが、何度か処方内容を変えて、ようやく落ち着くという経験もします。
FD、IBS は症状主体の病気ですが、まずは画像診断で他の病気を否定することが大事です。
稀ではあっても、お腹の症状の奥に重篤な病気が隠れていることがあります。
きちんと除外診断を受けた上で、治療に臨んでいただくよう、おすすめします。