胃カメラは苦しい?
内視鏡について2016.09.23
突然ですが、胃カメラは苦しいでしょうか?
答えはほぼイエスです。人間の体は異物の侵入を拒否するように出来ています。
本来ならば液体か、咀嚼して柔らかくなった食べ物しか通さないはずの喉に内視鏡スコープのような硬いものを通そうとすれば、体は本能的に拒否をします。さらに心理的な恐怖が苦痛を助長し、喉を緊張させスコープが通るのを拒みます。そこをなんとか通そうとすれば、受けている側は苦しくて当たり前です。
中にはベテランで上手なドクターがうまく患者さんの緊張を解かせて、素早く喉を通過させることができるケースもあるでしょう。または、慣れている方やあまり緊張しない方、喉の反射が弱い方はあまり苦痛なくスコープを飲み込めるかもしれません。でも多くの方はそうはいきません。きっと苦しい経験をした方も多いことと思います。
喉を通過するとき苦しい感覚があった方は、その後も苦しさが来るかもしれないという緊張状態が続き、検査中ゲップをこらえられなかったり、嘔吐反射やむせ込みなどが出てしまうことも多いです。検査が終わった時に唾液と鼻水、涙でグショグショなんてことはありませんでしたか?
私は、このような検査法は鎮痛麻酔をせずに傷を縫うようなものだと思います。
検査の必要性は感じていても、検査の苦痛や恐怖を考えると内視鏡検査を受けるのを躊躇してしまうのは当然のことだと感じます。
最近では経鼻内視鏡検査が苦痛の少ない検査として認知されてきています。確かに経鼻内視鏡スコープはとても細く、進入経路が嘔吐反射を誘発する部分を通らないため、従来の経口スコープと比較して格段に楽に受けられる方が多いと思います。一度経鼻内視鏡検査経験して楽だと感じた方は、次も経鼻法を選ぶ方がかなり多いと聞きます。
しかし経鼻も全ての方が楽だとは言えないのが現状です。特に鼻炎気味で粘膜が腫れていたり、骨格的に鼻腔が狭い方では痛みを感じたり、スコープがまったく通過しないケースもあります。また一部の最新機種を除いて、経鼻内視鏡スコープは一般的な経口内視鏡と比較して画質が劣るため診断に影響を及ぼすことも少なくありません。
以上のような理由から、私はもっぱら鎮静下経口内視鏡検査を奨めています。
意識がほぼない状態であれば当然喉は緊張しませんし、スコープも容易に通過します。検査中に患者さんが苦しさを感じてしまうと、体だけでなく胃も動きますので、うまく視野が取れずあまり良い検査にならないこともありますが、鎮静下ではそういうことはまずありません。検査を行うドクター側も落ち着いてゆっくり観察できるので診断もより正確になり、お互いに満足できる結果が得られます。
こんな話をすると良いことづくめのようですが、鎮静剤の副作用の危険性はたしかにありますので、適切な使用を行うためにドクターの豊富な経験と確かな知識が不可欠です。安全面だけではなく、検査後速やかに覚醒し、検査結果をきちんと理解していただくには、適切な鎮静剤の選択や使用量などの調整にもコツが必要です。
現代において胃の診断には必要不可欠な胃カメラ検査ですが、これまで怖くて避けていた方、以前の検査で苦しかった方など、ぜひ一度当院に相談にいらしてください。経鼻内視鏡検査も含めて、お一人お一人に合う検査法を提案いたします。